僕がいる。
私は、そのことを自分に知らせたいんじゃない。 しいて言うなら、僕への合図だ。 なぜって、いまここには私と僕、 あるいは僕しかいない。 そして僕は、あなたには会ったことがない。 |
けれど、いつか。
いつかあなたはここに現れるのだろう。 このページが開かれることがあれば、 そのとたんに、あなたは出現する。 ようこそ、と僕。 |
ようこそ。
僕の目があさってのほうを向いていると思ったので、 私はあわてて向きを変えてみるが、 それも見当違いかもしれない。 僕は、あなたとの幸福な出会いを疑っていないようだ。 私から聞くあなたの話に目を輝かせ、 思いをめぐらせながら、すごしている。 |
初めて、
僕と出会ったのは、いつのことだったろう。 私があなたになれないこと、 私でしかないことを悟ったとき? それまで私は、僕の存在を知らなかったし、 あなたにも自由に会えるだけでなく、 なれるつもりでいた。 今はあなたになれるどころか、 面と向かって出会える可能性さえ 危ういと思っている。 ただ、僕がいてくれることで、 あなたに出会える確率が上がる気がしたのを 覚えている。 単なる気のせいかもしれないが。 |
とにかく。
僕がいてくれなければ、 私はここに現れ出ることさえできない。 つまり厳密にはここで使っている「私」とは 「僕」のことなのだ。 どう言い換えても、 私自身が現れ出ることはできない。 よってここは、僕がいてくれる場合にかぎって、 私が私である唯一の場所だ。 それ以外に私が存在できる場所はどこにもない。 私は、つねに僕とともに生きている。 |
そう。
私はいつでも始まりからあとすべてを、 僕に任せるほかはない。 そうだったとしても、私は私だ。 私は僕でもなければ、あなたの一例でもない。 僕があなたに会うことをあきらめないかぎり、 私という夢はつづく。 |